白内障手術は特にトラブルがなければおおよそ10分程度で終わります。しかし、眼球の状態によって手術の難易度は様々でそれに伴い手術時間も多少前後します。

白内障手術を難しくする要因はいくつかありますが、その中で代表的なものは

1)白内障が著しく進行して水晶体が硬くなっている(→こちら。リンク先、「白内障の濁り方」の下の方にある褐色白内障をご参照ください。)

 白内障手術は目の中で水晶体を小さな破片に砕いて吸い取るため、水晶体が硬くなっていると砕く作業に時間がかかります。あまりに水晶体が硬くなると砕くことができなくなり、通常では傷口の大きさは2.4~2.6mmで手術を行うことが可能ですが、1cm程度に大きく傷口を広げる必要が出てきます。

2)瞳の開きが不十分である

 白内障手術前に、散瞳(瞳を大きくする事です)させて除去する水晶体を見やすくした状態で手術を行います。前立腺肥大のお薬を飲んでいたり、糖尿病や緑内障の方の一部に瞳の開きが悪い方がいて、手術時間が長くなる事があります。

3)水晶体の支えが弱い

 水晶体は「チン氏帯」と呼ばれるハンモックの紐のような組織で眼球に固定されています。このチン氏帯が弱いと白内障手術時間が長くなったり、さらに通常では眼球に挿入するだけで済む眼内レンズを糸と針を使って眼球に縫い付ける必要が出てくる事があります。

今日は(3)についてお話しさせていただきます。

水晶体の支えが弱くても、ほとんどの場合は通常と同様の術式で手術が可能ですが、手術前に支えがしっかりしているか弱いのか、事前に把握できていると執刀医も準備を整えて手術に臨むことができます。事前に水晶体をよく観察すると水晶体の支えが弱い事を予想することができます。

PE PEシェーマ付き

これはチン氏帯が弱い人の水晶体です。右の写真をよく見ると水晶体の表面に白いフケのようなものが付着しています。分かりやすくするために左の写真に灰色に強調して絵を描きました。中心に円形の部分と下の方にもべったりと白いものが付着しています。これを見ると眼科医は「あ、この方は手術する時に注意が必要だな」と判断して事前に必要な道具を準備して手術に臨みます。この白いフケのようなものの正体は「チン氏帯」と呼ばれるもので、水晶体を支えるハンモックのヒモのような組織です。このチン氏帯が溶けてしまう人がいて、溶けたチン氏帯が目の中を流れて水晶体の表面に付着すると写真のように観察することができます。

チン氏帯説明 チン氏帯の移動

溶けたチン氏帯が虹彩の淵に付着すると瞳の開きが悪くなり、これも白内障手術を難しくする原因になります。

また溶けたチン氏帯が隅角と呼ばれる目の中の水の出口に付着すると眼圧が高くなり緑内障になることもあります。

水晶体を支える部分が溶けてしまうため、結果として水晶体の支えが弱くなり手術を行うときに手術が難しくなることがります。水晶体の表面に写真のような白い塊が付着していてもほとんどの場合は通常と同じような時間で手術を終えることができますが、 程度によっては眼内レンズを眼球に縫い付けなければならないことがあるため、その可能性を事前に患者さん説明をして手術を行っています。

実際にチン氏帯が弱い人に対する白内障の手術で使用する特殊な道具、眼内レンズを縫い付ける方法、関連する緑内障に関してはまた後日お話しさせていただきます。